映画「トランス」 原題:Trance directed by Danny - TopicsExpress



          

映画「トランス」 原題:Trance directed by Danny Boyle cast: James McAvoy(ジェームズ・マカヴェィ)、Rosario Dawson, Vincent Cassel 影の主役はフランシスコ・デ・ゴヤの「空中を舞う魔女たち」(Witches in the Air)の絵そのものかも。 アートオークションの競売人サイモン(ジェームズ・マカヴェィ)は、ギャングの一味と結託して、競売にかけられているゴヤの名画「空中に舞う魔女たち(Witches in the Air)」を盗み出す計画に加わった。ところが、その絵を持ったまま逃走を図ろうとしたサイモンは、ギャングのリーダー、フランク(ヴィンセント・カッセル)に襲われ、頭を強く打って記憶を喪失してしまい、絵そのものも彼の持ち物の中にはない状態で発見された。 フランクは激怒して、サイモンの爪を剥がすなど拷問までするが、彼の記憶の中に、絵を隠した場所だけが完全に消えていた。 万策尽き果てたフランクは、催眠療法士のエリザベスを雇い、彼女はサイモンの記憶をよみがえらせるべく、催眠療法を行うのだが・・・ 名画を盗む・・・というとっかかり自体は、本作の本来の「本筋」ではなく、実は催眠療法のエリザベスとサイモンの関係性が徐々に明らかになってきて、ああ、そうなのか!と唸らせるところに「本線」があり、絵画の話は本来なら「伏線」なのだが、それが、単なる名画、古典絵画ではなく、ゴヤの「空中を舞う魔女たち」の行方を・・・というところが、なかなか凝った演出で、だからこそ「トランス」(陶酔)させられるのだ。 魔力を持った、人間の本性を鋭く突く、ある意味すごく毒を持った強い絵だからこそ、二転三転していく「記憶」と「喪失」と「執着」を巡る人物の絡み合いを色濃く印象づけていくんだなぁと。 あの絵でなければ、こんなに絡み合った「記憶」の糸をほどいていく複雑さに頭がついていかなかったと思うのだ。 あの絵が、魔力のように、言葉に頼らない本質をずばり語っているから、つまりは核心、答えをすでにあの絵が語っているから、最後の謎が解けたときに「ああ、最初から答えはここに出てたんだ」と納得できるし、改めて、ダニー・ボイル監督の手腕に唸らせられ、マイッタ!感と「満足感」で席を立つことができる。 改めて、絵画とかアートとかは、人の心の中を鋭く射貫いてくるものであり、言葉で解説をすること自体、アートを楽しむこととは異質なのだと思い知らされる。 喪失した記憶というのは、逆に、ある対象に対する強烈な執着の裏返し。なぜサイモンを見た瞬間、催眠療法士のエリザベスがあの表情を見せたのか。なぜ「ゴヤの魔女の絵だったのか」 全ては最後まで見たときに、「ああ、答えは最初に出てたやん!」とそこに一直線に結びつく。 だけど、ストーリー自体は、男女が絡み合いながら、刻々と状況は流転するように二転三転、ダッチロールのように揺さぶられていくから、こちらまで何か「陶酔して思考を止めてしまう」感じになっていく。 この陥る感じがたまらなく「してやられた」感で、これこそが「サイコスリラー」の醍醐味だ。 改めて、昨年、金沢21世紀美術館で年間を通じた展覧会となった「ソン・エリュミエール:音と光」展を見直してみたい気がしてきた。 ゴヤの絵が数点、要として展覧会の展示室に、しかも複数の室に分けて展示してあった。 昨年は、学芸員さんの解説を聞いても、自分自身で、「なぜ、ゴヤなの?」という疑問がずっと残っていた。私にまだまだバックグランドとしての経験値というか、知識が足りなかったのかなぁ? でも、展覧会ってやっぱりライブ感覚のもんやないの?って疑問がずっと残っていた。 が・・・なんか、今回の「witches in the Air(空中に舞う魔女たち)」を巡るこの映画を見ていて、ゴヤがあぶり出したもの・・・がなんとなく、感覚として腑に落ちた気がする。人の営みは、キレイなもんだけやない、人の心の奥底に、こんなぞくっと寒気を及ぼす「見たくはないが、絶対誰もが持っている闇と強い強い執着」があることに、改めて音と光を与えた・・・そういう展覧会だったのかなと・・・改めて思った。闇の力があるからこそ、執着やぞっとする嫌らしさの部分が強いから、人は輝きを放つのだともいえる・・・それもまた「真理」ではないかと。 キュレイターさんに「話してみたい」と思いながら、映画館を後にしました。
Posted on: Fri, 18 Oct 2013 21:44:31 +0000

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