田中宇の国際ニュース解説 無料版 2013年6月12日 - TopicsExpress



          

田中宇の国際ニュース解説 無料版 2013年6月12日 tanakanews/ ━━━━━━━━━━━ ★米中首脳会談と日本 ━━━━━━━━━━━  6月3日、米国のシンクタンクである大西洋評議会(アトランティック・カ ウンシル)の2人の研究員が、FT紙に「日本は竹島の領有権を放棄して韓国 領と認めるべきだ。日本が中国と対抗する気なら、韓国との協調を強める必要 がある。米国も日韓の協調を望んでいる。日韓の敵対を解消した安倍首相は、 ノーベル平和賞の最有力候補になれる」とする論文を出した。題して「安倍晋 三がノーベル平和賞をとれる方法」だ。 ft/cms/s/0/d22d9bb2-cc2e-11e2-bb22-00144feab7de.html How Shinzo Abe could win the Nobel Peace Prize  論文著者の2人が属する大西洋評議会は、国防長官に就任するまでチャック・ ヘーゲル元上院議員が会長をつとめていた。その前には、オバマの1期目の 安全保障顧問(国家安全保障問題担当大統領補佐官)になったジョーンズ・ジ ェームズが会長だった。2期目の同顧問に内定したスーザン・ライスも同評議 会のメンバーだった。同評議会が人的にオバマ政権と近いことから考えて、こ の論文の内容は、単に2人の研究者の意見にとどまらず、米政府がやんわり日 本に求めていることだと考えられる。 en.wikipedia.org/wiki/Atlantic_Council Atlantic Council - Wikipedia  米政府は、日韓が協調を強めることを、以前から望んでいた。日米韓が同盟 関係を深め、中国・北朝鮮の同盟体と長期に対峙することが、日韓の対米従属 派、米国の軍産複合体という、日米韓の主流派にとって好ましい姿だった。日 米と米韓の同盟関係はすでに強いので、あとは日韓だけだった。それで昨年、 史上初の日韓防衛協定の締結が模索された。また、その前から、対米従属色が 特に濃い日本のテレビ局などが、ドラマや歌謡で韓流ブームを煽ったりした。 tanakanews/130118japan.htm 中国と対立するなら露朝韓と組め  しかし、史上初の日韓防衛協定は、締結直前に竹島問題や従軍慰安婦問題、 教科書問題が日韓間でぶり返し、棚上げされたままになっている。日韓防衛協 定の締結は、米国にとって、日韓の米国依存を低下させ、日韓に駐留する米軍 のプレゼンス(存在感、影響力)を軽減して米政府の財政再建に寄与できる。 これは逆に、対米従属の国是の前提である米軍駐留をできるだけ長く続けても らいたい日韓の政府上層部にとって、危険なことだ。それがわかったので、日 韓は、初の防衛協定の締結直前になって竹島や慰安婦での対立を扇動し、協定 を潰したのだろう。しかし、その後も米政府は、日米への軍事駐留費の削減に つながる、日韓の協調を望んでいる。だから、今回の論文が書かれた。 tanakanews/120811dokdo.php 李明博の竹島訪問と南北関係  なぜ今、日本に竹島放棄の提案が米政府に近い筋から出てきたのか。その理 由はたぶん、6月8日から行われた米中首脳会談と関係している。今回の首脳 会談は、いくつもの意味で画期的だ。オバマと習近平は、各分野の国際情勢に ついて、2日間に合計8時間あまり話し合ったが、これまで米国の大統領が、 同盟諸国(しかも、米国に従属する一方の日韓などでなく、英国やフランスな ど覇権色がある同盟諸国)の首脳と国際情勢(覇権運営)について何時間も議 論することはあっても、同盟関係がなく敵対性が強い国の首脳と覇権運営を話 し合うことはなかった。米国のネオコンは「オバマは中国を同盟国扱いしてい る」と怒っている。 atimes/atimes/China/CHIN-02-060613.html Humble pie for Xi on Sunnylands menu ft/cms/s/0/a47cc686-d118-11e2-be7b-00144feab7de.html Obama-Xi summit presented as a walk in the park  米中首脳が国際情勢について長時間話すのは、1971年に米中関係を正常 化するために訪中したニクソンと毛沢東との17時間の会談以来だという指摘 がある。冷戦終結につながった1980年代末のレーガンとロシアのゴルバチ ョフとの連続対話にも似ている。いずれの対話も歴史的転換を引き起こした。 ニクソンと毛沢東が話し合って米中関係を正常化し、レーガンとゴルビーが話 し合って冷戦を終わらせたように、オバマと習近平が話し合ったことで、米中 関係の協調化や覇権の多極化が進むかもしれない。今回の米中会談は具体的な ことをほとんど決めなかったが、それだけに、長期的な世界運営のあり方につ いて、発表できないようなこと(一般市民は「知らない方が良い」こと)を話 し合った可能性が高い。 atimes/atimes/China/CHIN-01-110613.html Obama and Xi forge a way out (この手の米中首脳会談は、習近平の前任者だった胡錦涛の時代には考えられ なかった。胡錦涛は、米国に対して非常に慎重な姿勢をとり、09年の米中首 脳会談で中国側の意見を言うとき、中国外務省などが事前に用意した紙を読む だけで、それ以上の自分の言葉を発しなかった。対照的に習近平は、自分の言 葉でオバマと話した。胡錦涛は「トウ小平の24字讒言」を守っていたが、習 近平はそこから脱している) brookings.edu/blogs/up-front/posts/2013/06/03-us-china-relations-obama-xi-california-summit-lieberthal U.S.-China Relations: The Obama-Xi California Summit tanakanews/090807china.htm 多極化の進展と中国  米中首脳会談では、地球温暖化問題が話し合われたが、09年のCOP15 以来、中国は、温暖化対策の世界的な議論において、発展途上諸国の主導役を つとめている。先進諸国の代表である米国と、途上諸国の代表である中国とい う、世界を二分する2者が、温暖化対策の今後について話し合ったことになる。 tanakanews/091031warming.php 新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題  米中は、サイバーセキュリティについても話し合ったが、これも、ネット管 理の分野で、米国が先進諸国の代表であり、中国が途上諸国の代表的な存在だ (多くの途上国が中国製の国家ファイアーウォールを使って言論統制などをし ている)。 tanakanews/130606china.php 米国と肩を並べていく中国  両者は、尖閣諸島や南沙諸島の問題など、太平洋地域の紛争についても話し 合った。これも、まるで米中が太平洋地域の西と東の対等な代表であるかのよ うなあり方だ。米中が対等な関係になると、米国の傘下にいる日本は、中国よ り格下の国になってしまう。日本が中国と対等に張り合おうとすれば、対米従 属から脱しなければならない。日本では、米国が日本の味方をして尖閣問題で 中国を叱ってくれたという感じの報道になっているが、米政府は、尖閣問題で の「中立」を繰り返し表明している。日米が中国と対立しているのでなく、日 中の対立を米国がなだめている状況だ。 tanakanews/120829japan.htm 東アジア新秩序の悪役にされる日本  最近、自民党の重鎮だった野中広務元議員ら(元)議員団が中国を訪問し、 尖閣問題の再棚上げについて中国側と話し合った。訪中で尖閣問題が話し合わ れたのは、米中首脳会談に絡んで、米中双方から日本に依頼があったのでない か。訪中団は、日本を国際的な行き詰まりから救おうとしたが、日本を支配す る官僚機構やその傘下のマスコミは、それをあざ笑うだけで終わっている。  オバマ政権はここ2年ほど「アジア重視」という戦略名で「中国包囲網」を アジア諸国に作らせてきた。日本が、尖閣諸島の土地国有化で中国との紛争を 激化させたのも、その一環だ。米国にとって中国包囲網の利点は、米国がアジ ア諸国を守ってやる見返りに、各国市場への米企業の参入強化(日本のTPP 参加とか)や、米国製の兵器購入など「用心棒代」をアジア諸国に出させるこ とだった。 tanakanews/111117australia.htm 中国包囲網の虚実 tanakanews/111120asia.php 米国の「アジア重視」なぜ今?  しかし、今回の米中首脳会談を機に、米国は、中国包囲網策でアジア諸国か らせびるよりも、中国と協調して中国に世界運営の負担の一部を背負ってもら うことによる利得を重視する方に向かいそうだ。折しも中国政府は、中国国内 の消費市場を拡大し、これまでの輸出主導型の経済を内需主導型に転換しよう としている。米企業が中国市場で拡販するには、米政府が中国を敵視するより、 中国と政策協調していた方が都合が良い。米国は、大企業や金融界が国策を 決める国だ(TPPを牛耳るのは米政府でなく米財界だ)。オバマ政権が、中 国を敵でなく味方と見始めたのは自然な動きだ。 tanakanews/100614china.php 中国を内需型経済に転換する労働争議  米議会は、中国敵視のタカ派が席巻しているので、米国全体としては、今後 も中国敵視が続くかもしれないが、米政府は「財政に余裕がない」「米国の威 信低下で、中露など他の大国の強力が不可欠だ」といった理由で、中国との現 実的な協調関係を強めたり、中国の台頭を容認せざるを得ない。米議会は、 IMF世銀などの国際機関に関し、中国の影響力を強める制度改定を拒否して いる。しかしその結果、中国は、他のBRICSや途上諸国と組んで、IMF 世銀に代わる国際機関を作ろうとしている。また中国は、ドルの代わりに人民 元と相手国通貨で各国と貿易しようとしている。これはドルの基軸通貨体制を 壊す。 tanakanews/120803uschina.htm 米中関係をどう見るか  米国が中国敵視を続けるほど、米国が作った戦後の世界システムが壊れてし まう。もともと中国は、米国製の世界システムが嫌いでないどころか大好きだ。 改革開放など、中国の近代化の本質は「欧米化」である。米国が1990年代 にロシアだけでなく中国もG7に入れて「G9」にしていれば、米国の世界 運営はもっと円滑になっていたかもしれない。今からでも、中国を米国中心の 世界システムの中に取り込んだ方が、米国の覇権延命に好都合だ。 ft/cms/s/0/b4a42b7e-cecc-11e2-8e16-00144feab7de.html China and America should strike a grand bargain  米国が中国への敵視を軽減するほど、日本や韓国にとって、日米韓の同盟体 が、中朝の同盟体と長期対立するという構図が崩れる。今回の米中首脳会談で は、北朝鮮問題も話し合われた。北朝鮮核問題の6カ国協議は、03年の当初 から中国主導だ。オバマは習近平に、北朝鮮問題の主導役をあらためて頼んだ はずだ。その結果として、北朝鮮は、中国から働きかけられたらしく、6カ国 協議の再開に賛成する意を突如として表明し、開城工業団地の再開に向けた南 北会議も開かれる方向にある。  6カ国協議は、北朝鮮が核廃棄する見返りに、韓国と北朝鮮、米国と北朝鮮 が和解するシナリオだ。北朝鮮はすでに核弾頭を持っており、手放さないと何 度も表明している。北朝鮮は、米国や中露が核廃棄しない限り自国も核廃棄し ないと言っている。北が核廃棄に応じるには、少なくとも在韓米軍の完全撤退 が必要だろう。6カ国協議が今後進むかどうか怪しいが、方向として、韓国は、 日韓と同盟体を作って中朝と対決する構図を抜けて、対中協調(中国の傘下 入り)と南北対話の方に転換していきそうだ。  オバマが習近平に北核問題の主導役を頼んだことは、事実上、朝鮮半島に対 する米国の覇権を放棄したのと同じだ。韓国は今後しだいに、米国との同盟関 係よりも、中国との協調関係を重視するようになるだろう。米韓の同盟関係が 希薄になるほど、韓国は日米韓の同盟体を重視しなくて良くなり、日韓協調の 必要が低下し、竹島や慰安婦など日韓対立の根にある諸問題を解決する気がな くなる。その意味で、大西洋評議会の研究者が「日本は竹島を放棄して韓国に あげた方がよい」と提唱したのは、早くそれをやらないと、やっても意味がな い時代になるので「最後の機会だ」という趣旨かもしれない。 tanakanews/110512korea.php 米中のはざまで揺れる韓国  安倍政権は、中国と張り合って、アフリカ諸国に経済支援を増やしたり、ア ジア地域の安定に寄与するための軍事拡大を進めると宣言したりしている。し かし、日本にとって絶対的存在の「お上」にあたる米国が、日本の頭越しに中 国と首脳会談をやって協調を強める中で、日本が中国と張り合うこと自体が難 しくなりつつある。 tanakanews/120206china.php 中国とアフリカ  今後は、日本が、アフリカ支援や、アジア安定への軍事的貢献をすることが、 中国と張り合うことでなく、正反対の、中国が米国から任されてアジアの安定 を主導することへの協力を意味するようになるだろう。中国と張り合うはずが、 中国に協力することになる。それがいやなら、米国にも中国にも協力せず、 鎖国的傾向を強めるしかない。今後の日本は、表向き対米従属を国是とし続 けながら、実態的に、やむを得ずの対中協調と、外交的鎖国との間を行き来す る可能性が高い。  米国が実質的に中国包囲網をやめていくなら、日本が日米関係強化を目的に 国民生活や農業など国益を犠牲にしてTPPに参加することも無意味になる。 TPPは「中国抜き」で、米国主導の中国包囲網としての色彩があったからこ そ、日本は国益を犠牲にして参加することにした。しかし、米中首脳会談の前 から、中国は、TPPの反中国的な色彩を塗り替えようと「中国もTPPに参 加したい」と言い出した。米中首脳会談で、オバマは中国のTPP参加に賛成 した。米欧のマスコミやシンクタンクも、TPPが中国を外しているのはおか しいと書き始めている。 brookings.edu/blogs/up-front/posts/2013/05/24-china-transpacific-partnership-solis The Containment Fallacy: China and the TPP theamericanconservative/trans-pacific-partnership-trade-agreement-or-anti-china-alliance/ Trans-Pacific Partnership: Trade Agreement or Anti-China Alliance?  中国は経済や貿易の態勢が日米などと大きく異なるため、TPP参加は簡単 でないが、TPPの主導役は米国の大企業だ。米企業は、これから国内消費市 場を開放しそうな中国をTPPに取り込んだ方が儲けが大きくなるので、中国 の参加を歓迎しかねない。そうなるとTPPは、中国包囲網から米中協調の場 に変質してしまい、日本が国内農業や国民生活を犠牲にしてTPPに入ること が全くの無駄になる。 tanakanews/120101CJKFTA.htm TPPより日中韓FTA
Posted on: Wed, 12 Jun 2013 22:46:19 +0000

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